人間ドック・健康診断の腎機能検査では、どのようなことが調べられているのでしょうか。また、異常を指摘された場合どんな病気の可能性があるのでしょうか。ここでは、腎機能検査値のそれぞれの意味疑われる病気について解説していきます。

目次

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腎機能検査とは?それぞれの数値は何を測定している?

腎臓には、

  • 尿をつくる
  • 体内の環境を一定に保つ
  • 血圧を調節する
  • 赤血球産生を助ける
  • ビタミンDの活性化

といった役割があり、体の正常な働きのためになくてはならない臓器です。人間ドックでは腎臓の機能に問題がないのか、血液検査および尿検査でチェックします。

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尿検査で調べられている腎機能

尿たんぱく

通常、尿にはほとんどたんぱくは含まれません。尿に多くのたんぱくが検出されるということは、腎臓の機能に障害が発生している可能性があります。一方で健康な人でも、激しい運動や、発熱ストレスによりたんぱくが検出される場合があります。

尿潜血(にょうせんけつ)

尿の通り道となる腎臓や尿管、膀胱や尿道のどこかで出血していると、尿中に血液が混ざります。尿潜血は、肉眼では確認できない血液を検出することができるため、病気の早期発見にとても有用な検査です。

尿沈査(にょうちんさ)

尿の中に含まれる細胞成分細菌などを顕微鏡で調べる検査で、尿路のどこかに障害があると検出されます。

たとえば、血液細胞が検出された場合、腎臓や尿路のどこかで炎症出血が生じている可能性があります。上皮細胞といって尿細管や腎盂・膀胱由来の細胞が検出されたのであれば、炎症腫瘍が疑われます。

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血液検査で調べられている腎機能

血清クレアチニン

クレアチニンは、筋肉中の物質からできる老廃物で、腎臓でろ過されたあと尿に排出されます。クレアチニンは尿に排泄されますが、腎臓の機能が低下すると血液中に増え、数値が上がります。

尿素窒素(にょうそちっそ)

たんぱく質が分解・代謝された後にできる老廃物で、尿に排泄されますが、腎臓の機能が低下すると血液中に増え、数値が上がります。

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検査値の異常、どんな病気が疑われる?

人間ドックで腎機能検査に異常があるといわれた場合、どんな病気の可能性があるのでしょうか?下記の表に基準値と基準値をはずれた場合に疑われる病気についてまとめました。一部の基準値は、検査を行う組合・団体・病院によって異なる場合があります。

尿検査

検査項目 基準値 基準値を外れた
場合に疑われる
病気
尿たんぱく 陰性 糸球体腎炎
糖尿病腎症
その他尿路の感染症・結石
溶血性貧血
尿潜血 陰性 腎臓・尿路系の炎症・結石・腫瘍
溶血性貧血など血液の病気
性器出血
ナットクラッカー現象(※)
尿沈査 赤血球:
1~2個以下/1視野
高齢女性では5個以下
腎炎
腫瘍
結石
膀胱炎
白血球:
1~2個以下/1視野
尿路の感染症
前立腺炎
上皮細胞:
数個以下/1視野
腫瘍
炎症
円柱:
0/1視野
腎炎
ネフローゼ症候群
細菌:
4以下/1視野
尿路感染症

血液検査

検査項目 基準値 基準値を外れた
場合に疑われる
病気
血清クレアチニン 男性:
0.6~1.1mg/dl
女性:
0.4~0.8mg/dl
低値のとき
筋ジストロフィーなどの
筋肉の病気
尿崩症
肝障害
高値のとき
腎不全
心不全
脱水
肝障害
尿素窒素 8.0~20.0mg/dl 低値のとき
尿崩症
肝障害
高値のとき
腎不全
心不全
脱水
肝障害

出典:全国健康保険協会恵比寿健診センターを参考にいしゃまち編集部作成

※ナットクラッカー現象:腹部大動脈と上腸間膜動脈の間を通る左腎静脈が、両者に挟まれ圧迫される現象で、クッションとなる脂肪の少ない痩せ型の人に多いといわれています。肉眼的な血尿の原因となることがあります。

また、腎機能検査値は激しい運動や脱水などで異常を示す可能性もあり、ひとつの検査項目が基準値をはずれていたからといって、すぐにその病気だということではありません。

しかし、腎臓病は重症にならないと自覚症状がなく、腎臓病患者のうち70%以上の方が健康診断で病気が判明したというデータもあります(全国腎臓病協議会より)。さらに、腎臓は完全に機能不全におちいると元に戻ることができない臓器ですので、自覚症状がなくても人間ドックでこれらの項目に異常を指摘されたら、なるべく早めに腎臓内科もしくは泌尿器科を受診することが大切です。

病気が疑われるとき、他にどんな検査が必要?

「要精密検査」となり、医療機関を受診すると再度尿検査や血液検査を行います。そこでもやはり検査値が基準値をはずれた場合には、病気の可能性を疑い、精密検査を行うことになります。

ここでは、人間ドックで異常を指摘されて判明することが多い腎臓病について、病気の概要、検査や治療について解説していきます。

1.慢性糸球体腎炎

尿や血尿が長期間(通常は1年以上)続く、腎臓の糸球体という組織の炎症が主体となった疾患です。たんぱく尿が1日あたり0.5g以上みられる場合や、たんぱく尿と血尿が同時に認められたり、尿沈渣で変形赤血球や病的な円柱を認めたりする場合に腎生検(腎臓の組織の一部をとり顕微鏡で調べる検査)を行う場合があります。それによって組織学的診断を行い、治療方針を決定します。頻度としてはIgA腎症が多いです。

2.ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は子供に多い病気ですが、成人でもかかることがあります。高度のたんぱく尿が続き、体にむくみや高コレステロール血症が出現することが多い病気です。慢性糸球体腎炎のなかに含まれる症候群です。診断は尿検査と血液検査のほか、確定診断のために腎生検を行うケースもあります。

治療は、むくみを軽減させるために安静、必要に応じて塩分制限、利尿剤(尿の出方を良くする薬)の投与を行い、病気そのものを改善させるためにはステロイド免疫抑制剤を投与する場合があります。

3.慢性腎臓病(CKD)

たんぱく尿などの尿異常や画像診断、血液、病理での腎障害、②腎臓のろ過機能が低下した状態 の①、②のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続する状態を指します。進行すると腎臓は体内の老廃物を排泄できなくなり、透析療法腎移植が必要になります。上述の慢性糸球体腎炎も、慢性腎臓病に含まれます。

診断は血液・尿検査のほか、超音波エコー検査などで行います。腎機能障害が慢性に進行していくとエコー上、腎臓は萎縮していくことが多いです。人間ドックなどで早期発見できれば、薬物療法および塩分やたんぱく質の制限など食事療法を行うことで進行を遅らせることができる可能性があります。

治療するほどでないと言われたけれど…、日常生活での注意点

医療機関を受診し、現在のところ腎機能は維持しており、経過観察でよいといわれ、ほっとした、という方もいると思います。しかし、今後も腎臓に負担のかかる生活を続けていると病気につながる可能性があります。糖尿病などの生活習慣病から腎障害をきたすこともあり、生活習慣が腎臓病に直結してしまうこともあるのです。

腎臓に負担をかけない生活として、下記のようなことを注意しましょう。

  • 適度な運動
  • バランスのとれた、塩分控えめの食生活
  • 体重の管理
  • 禁煙
  • 定期的に人間ドックや健康診断で腎機能をチェックする
  • むくみや血尿など異常があれば速やかに医療機関を受診する

すでに腎臓病を指摘されている場合には、それぞれの病気や病気の進行状況によって食事制限の内容が異なるため、かかりつけ病院の指示に従いましょう。

まとめ

腎臓は体のバランスを一定にし、老廃物を排泄するという重要な役割を担っています。腎臓病は重症にならないと自覚症状がないケースが多く、しかも機能不全におちいると回復が難しい臓器ですから、定期的な人間ドックを受けることで異常の早期発見に努めたいものです。なお、人間ドックに興味がある方は、こちらのリンクから予約が可能です(人間ドックのここカラダのページが開きます)。