急に背中の左側(左背部)が痛くなったときはありませんか。背中の痛みは腰痛症や尿路結石が一般的な疾患です。場合によっては胃潰瘍や狭心症など臓器が原因の疾患が潜んでいる可能性もあります。今回は腰痛症などのほか、体の構造上左側に位置する膵臓(すいぞう)や胃、心臓で背中に痛みが出る場合もある病気について取り上げます。

目次

背中の左側が痛む病気

転移性脊椎腫瘍

がん細胞が脊椎の骨で増殖し、その骨を破壊します。その結果骨が弱くなり、折れてしまいます。
その後折れた骨のかけらや腫瘍で脊髄が圧迫されると麻痺してしまいます。

早期に化学療法ホルモン療法で治療します。

腰痛症

椎間板ヘルニア脊柱管狭窄症など神経を圧迫して起こる病気で、背中の左側が痛むことがあります。
安静にして、神経の痛みや炎症を和らげる注射(神経ブロック)をして治療します。それでも改善しない場合は手術を行います。

ただ腰痛症で原因がはっきりしているのは全体の約15%程度で、残りは分かっていません。
生活習慣やストレスなどが影響しているとされています。

尿路結石

尿路に石ができて、尿の流れを止めてしまい、炎症や感染、腎機能障害を引き起こします。
代謝の異常や肥満、生活習慣の乱れなどが原因となります。

下腹部を突然激痛が襲うほか、排尿時に違和感を感じることもあります。
左側に石ができると左背部痛が起き、吐き気や嘔吐、血尿を伴う場合があります。

水分を多く摂取するほか、薬を服用して尿から排出させる方法が一般的です。
石の大きさによっては自然に出すのが難しいため、超音波やレーザーなどで石を破砕させる方法も検討されます。

左の背中が痛む可能性を持つ病気

ここまでは、背中の痛みを感じた場合に考えられる一般的な病気を紹介しました。他にも、下記のような病気でも背中の痛みが症状としてあらわれることがあります。

膵炎

急性膵炎

膵臓から出る消化酵素が胆石や腫瘍などで通り道を閉塞され、膵臓内にたまって自己の細胞を消化して炎症を起こします。
アルコールの飲み過ぎや胆石が大きな原因とされています。

突然強烈な上腹部痛から始まり、左側腹部から背中にかけて放散痛が出現し、吐き気や嘔吐も伴います。
重症化した場合には、血圧低下や頻脈などのショック状態に陥ることがあります。

絶対安静・禁食・痛みの緩和を行いますが、重症の場合は効果的な治療法がありません。

慢性膵炎

長期的に膵臓が炎症を起こしている状態です。
原因はアルコールの飲み過ぎとそれ以外に分けられます。

しばしば急性膵炎のように痛みが上や左腹部、背中まで移動する場合と、常に腹部が痛む2種類があります。糖尿病や消化不良も合併します。

断酒などで膵臓を休ませ、痛みを緩和していく治療をしていきます。

胃潰瘍

胃潰瘍は胃液の分泌が盛んとなり、自己の粘膜を損傷して潰瘍を作った状態です。
ピロリ菌による感染のほか暴飲暴食やお酒の飲み過ぎ、不規則な生活習慣で胃粘膜の抵抗力が低下したり胃液の分泌が盛んになって発症します。

空腹時や食後の痛み胸やけや胃のむかつき、吐き気や嘔吐などが現れます。
また背中や腰の左側の痛み重症時には吐血や血の混じった排便もみられます。

ピロリ菌を保菌しているとがんの発症率が高くなりますので、必ず除菌しましょう。
薬物療法や食事療法休養・生活習慣の見直しながら治療していきます
壊れたハート-写真

心筋梗塞

心筋梗塞とは、心臓に酸素を運ぶ主要な血管が詰まって心筋が壊死し、心臓が正常に働かなくなる状態です。命を失う危険が非常に高い病気です。

動脈硬化によるものが多く、コレステロールの摂り過ぎ運動不足、喫煙、肥満など生活習慣によって血栓(血の塊)が作られやすくなって発症します。

一番の症状は激しい胸の痛みで、そのほか左側の肩や背部痛呼吸困難嘔気や嘔吐、意識消失や冷や汗、顔面蒼白、血圧低下やショック状態が出ます。

初期の場合は痛みを和らげ、再発を予防する薬で対応していきます。
危険なときは発症後12時間以内に血栓溶解薬や手術によって治療することで死亡率を下げることができます。

狭心症

心臓の血管が狭くなり、一時的に血流が悪くなって、酸素が行き届かなくなって苦しくなる状態のことをいいます。
動脈硬化が進んで血管内が狭くなっているのが主な原因です。

心筋梗塞と同じように胸痛がメーンの症状で、痛みは左肩や背部など外側につながっていきます。

のどの圧迫感もあります。症状は数分続くことが多いです。
痛みには薬剤としてニトログリセリン舌下錠を服用します。血管を広げるなど手術もあります。

大動脈解離(解離性代動脈瘤)

外膜・中膜・内膜の3つの層からなる大動脈が、何らかの原因により内膜に穴や裂け目ができ、中膜との間に血液が流れ込んで発症します。

本来、運ばれるべき臓器に栄養と酸素が届かないためショック状態となります。

内膜に穴や裂け目ができる原因は高血圧症や動脈硬化の関連性が高いことと、先天的に中膜が弱い疾患があることが知られています。

突然胸や背部に杭でも打たれたかのような激痛が走ります。
その後、腹部から足の方と下へ向かって痛みが移動する特徴があります。

合併症として呼吸困難顔面蒼白、意識消失が挙げられます。痛みと血圧をコントロールした上で、人工血管を使って治療していきます。

まとめ

左側の背中に痛みが走った場合には、基本的には腰痛などが当てはまります。

ただ場合によっては命の危険性が高い病気が発症しているかもしれません胸の痛みといった他の症状と合わせて出てくることが多いです。

いつもと違う痛み、さまざまな痛みが出てきて、しかも長く続くようであればすぐに病院を受診をしましょう。