普段みられる透明、白色をした痰とは違い、黄色や緑色の痰が出たときはどのような病気が考えられるでしょうか。今回は黄色や緑色の痰がみられる疾患について解説していきます。合わせて痰ができるメカニズム普段の色とは違う痰がなぜ出るのかも合わせて説明します。

目次

痰が出るメカニズム

気道の粘膜から分泌される粘り気のある液体(分泌液)で、健康な人でも出ています。
普段は気づかない間に痰を飲み込んでいますが、ウイルスや細菌、ハウスダストなどの異物が気道に入り込むと気道の粘膜に炎症が起きます。

すると異物を身体の外に出そうとする働きが起こるため、分泌液がいつもよりもたくさん出てきます。
溜まった分泌液が死滅した細胞や異物などをからめとって固まりとして外へ排出されたものが痰です。

痰の色が黄色や緑色になる理由

咽頭や喉頭、気管支のウイルス感染などで炎症を起こしたとき気管支喘息では、痰は粘度が高くネバネバしたもので黄色がかってみえることがあります。

細菌による感染が起こった時には炎症によって死滅した白血球などの炎症細胞も痰として排出されるので、黄色や緑色などの色のついたドロッとした膿のような痰(膿性痰)が出ます。

黄色や緑色の痰がみられる疾患4つ

首を押さえる女性-写真

気管支拡張症

気道の感染と炎症を繰り返すことで気管支が拡がってしまう病気です。先天的な場合もあります。
気管支が拡がっていると痰を排出しにくく、痰が溜まって細菌などが繁殖して炎症を起こしやすくなります。

黄色や緑色の痰、、発熱、呼吸困難などの症状がみられます。

拡がった気管支に血管が増えることで血の混じった痰や咳と一緒に血を吐くこともあります。

びまん性汎細気管支炎

気管支が枝分かれして肺胞になる手前の部分を呼吸細気管支といい、そこに慢性的に炎症が起こることで咳、痰、息切れなどがみられます。

慢性副鼻腔炎を伴う場合が多く、鼻閉、膿性鼻汁(黄色や緑色のドロッとした膿のような鼻水)、嗅覚低下などもみられることがあります。
副鼻腔炎では鼻汁が喉に流れ落ちる感覚があり、痰が排出されているように感じますが、副鼻腔炎からの分泌物は後鼻漏と呼びます。

気道の細菌感染が起こると大量の痰が出ます。適切な治療を行わずに症状が進行すると呼吸不全に陥ることもあります。

肺炎

肺胞に感染性の炎症、主に細菌感染により炎症が起きると、肺炎の所見として膿性痰を認めます。
高齢者では高熱にならないこともありますが、発熱、咳、胸痛、呼吸困難を伴うこともあります。

重症化する可能性の高い肺炎として、肺炎球菌性肺炎、MRSA肺炎、緑膿菌肺炎を解説します。

1.肺炎球菌性肺炎

膿性痰でも、鉄錆色の痰がみられます。重症肺炎となり、細菌が血液を介して全身にまわる敗血症を呈することもあり、適切な診断と治療が必要です。

喀痰検査で細菌同定と薬剤感受性検査をすることも重要ですが、喀痰検査は結果が出るのに数日間かかります。
尿中抗原といって、尿検査によって肺炎球菌の抗原を15分で検査することが可能となり、診断に有効です。

また、重症化を防ぐために、65歳以上の高齢者には肺炎球菌のワクチンによる予防が推奨されています。

2.MRSA肺炎

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の感染による肺炎で、院内肺炎(病院や施設内で、手術後の患者や高齢者など免疫の低下している人に感染する肺炎)でよくみられます。

発熱、咳、膿性痰がみられます。
重症化すると肺の組織が破壊された部分に膿が溜まる肺膿瘍(はいのうよう)や、胸水に細菌が繁殖する膿胸を起こすこともあります。

3.緑膿菌肺炎

緑膿菌の感染による肺炎で、発熱緑色の痰がみられます。

気管支拡張症びまん性汎細気管支炎などの慢性疾患があり、長期にわたる炎症によって免疫が低下していると緑膿菌に感染しやすくなります。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

COPDは肺が炎症を起こす疾患で、喫煙が主たる原因です。
慢性的に気道や肺胞の炎症が起こり、がみられます。ガス交換の効率が悪くなって、動いただけでも息切れが起きることがあります。

まとめ

黄色や緑色の痰はウイルスや細菌、その他の外的な刺激による呼吸器の炎症によって起こるものが多いです。
適切な治療を受けないまま放っておくと、慢性的な症状となってなかなか回復しなかったり、重症化してしまったりすることもあります。

黄色や緑色の痰がみられたら、ひどくならないうちに呼吸器内科耳鼻咽喉科を受診しましょう。