お腹を触ったときにかたまりのようなもの(しこり)を感じたことはないでしょうか?腹部にしこりがみられる場合、上腹部であれば胃や肝臓、脾臓、下腹部であれば大腸や腎臓、女性では子宮や卵巣などの病気が考えられます。今回は、お腹にしこりができた場合に注意したい病気や病態について、上腹部と下腹部に分けて紹介していきます。

目次

上腹部のしこりで考えられる病気・病態

脾腫

脾臓は左脇腹の上側にある握りこぶし程度の大きさの臓器で、通常肋骨に覆われています。古くなった赤血球を壊したり、免疫機能を担うリンパ球の製造を行っていたりします。肝硬変や白血病などの病気が原因で脾臓に負担がかかるか、また脾臓の仕事量が増えた場合は腫れて大きくなります(腫大)。

腫大すると周囲の臓器を圧迫して、吐き気や嘔吐、便秘お腹の張り呼吸困難などの症状を示すことがあります。大きくなった場合は左脇腹にしこりを触れることもあります。

肝嚢胞

肝臓の中に嚢胞(のうほう、水が溜まった袋)ができることです。数mm程度から大きいもので10cmを超えるものがあります。小さい場合は治療の必要はありませんが、大きいものでは上腹部にしこりを自覚したり、お腹の張った感じや腹痛食欲低下などの症状がみられます。

水がとどまったところでは感染が起こりやすく、その場合発熱がみられることもあります。

 

加えて、上腹部にしこりが触れた場合は胃がんの可能性も考えられます。ただし、しこりが外から触れるのは腫瘍が大きなときに限られます。吐き気や嘔吐、下痢、便秘、タール便(黒い血便)、胸やけ、胃もたれげっぷなど、他の症状に注意するようにしましょう。検診を受けることも早期発見のために有効です。

下腹部のしこりで考えられる病気・病態

お腹にしこりがないかチェックする女性

腹部大動脈瘤

身体の中心をまっすぐ走っている動脈を大動脈といい、そのうち腹部にあたる部分を腹部大動脈といいます。動脈瘤とは動脈の壁の一部が膨らんだコブのようなものです。小さいうちは無症状ですが、大きくなると背中やお腹に違和感や痛みを感じることがあります。場合によっては、腹部に拍動を感じるしこりを触れることもあります。

破裂すると大出血を起こして急死する危険性のあり、早めに見つけておくことが大切です。

腎腫瘤

腎臓にできたしこりのことを総称して腎腫瘤といいます。悪性腫瘍(がん)や良性の血管脂肪腫などの場合が多いですが、良性か悪性かを判断するためには精密検査が必要です。

子宮筋腫

子宮筋腫は子宮に出来る良性の腫瘍で、原因は明らかになっていません。経血量が増えるため貧血が現れたり、月経痛や腰痛がみられるたりすることがあります。子宮の外側や内側にでき、大きさや数も人によって異なります。大きいものであれば下腹部にしこりとして触れることもあります。

卵巣腫瘍

卵巣腫瘍は月経や生理にあまり影響せず、自覚症状に乏しい病気です。約90%は良性であることが知られています(日本婦人科腫瘍学会より)。腫瘍が小さければ、ほとんどの場合で無症状です。まれに茎捻転(卵巣の付け根が捻じれる)が起こることがあり、その場合は激しい下腹部痛が生じます。

20cmを超えるほど大きくなると下腹部にしこりを触れたり、周囲の臓器を圧迫して動悸や息切れ、便秘、下腹部痛などの症状がみられることがあります。

 

このほか、下腹部にしこりが触れた場合は大腸がんの可能性も考えられます。ただし胃がん同様、よほど大きくない限りは外から触れることはないため、定期的な検診や腹痛・下痢・出血・残便感その他の症状に注意するようにしてください。特に、一度でも便に血が混ざった場合はすぐに受診が必要です。

まとめ

腹部のしこりは動脈瘤、嚢胞などさまざまな原因が考えられます。胃がんや大腸がんでも触れる場合がありますが、よほど腫瘍が大きくなってしまっている場合のみです。

いずれにせよ、しこりが触れる場合ようであれば上記以外の病気も含め、何らかの重大な疾患が原因となっていると考えられます。すぐに病院に行くことをおすすめします。