お腹にガスが溜まると不快で、お腹の音やおならが鳴ってしまうと人の目も気になります。
ガス溜まりがみられた場合は体内のガスバランスの乱れ、腸の異常、精神的な影響が考えられます。

今回はガスが溜まるメカニズムや原因に加え、注意したい病気や病態について紹介します。

目次

お腹にガスが溜まるメカニズム

ガスは飲食のときに口から入る空気、胃液と膵液が混ざるときに発生するもの、腸内細菌が作りだすものの3つに分けられます。

正常であれば腸内のガスは血液中に取り込まれて肺から息として出たり、げっぷやおならとして排出されたりします。

しかしお腹の中で発生するガスが多くなったり、排出される量が少なくなったりするとお腹が張る、お腹が膨らむ(ぽっこりおなか)、ゴロゴロする、圧迫感がある、重い、痛い、おならが出やすいといったガス溜まりの症状が現れます。

ガスだまりの原因

有害物質を出す腸内細菌の増加

腸内には多くの細菌が存在しますが、ストレスがたまると自律神経(副交感神経)が乱れて有害な物質を出す菌が増えやすくなり、その結果ガスも多くなります。

また便秘も腸内細菌を増やす原因になります。

ガスの増える食事

食物繊維の多いイモ類・豆類・根菜や発酵食品などを食べ過ぎると腸内ガスが出やすくなります。

また高タンパク質、高脂肪は菌のエサになるので腸内細菌が増え、ガスが多くなります。

口から入る空気の増加

普通の人でも食事や喋っているときに口から空気を飲みこんでいます。
それに加えて食事の一口の量が多い、早食いになると空気を飲みこむ量が増えます。

また炭酸飲料やビールはお腹のなかで空気を発生させるのでガスが増えます。

胃腸の運動能の低下

ストレスや胃腸炎などで胃や腸の動きが鈍くなると、腸内にあるガスを排出することが出来なくなります。
お腹が張ったり、ぽっこりお腹になったります。

お腹にガスが溜まる病気

食事する男性-写真

かみしめ呑気症候群

無意識に空気を飲み込んでしまい、胃や腸にガスが貯まる病気です。
多量のげっぷ、またはおならが出たり、腹部膨満感左上腹部痛の症状が現れたりします。

さらに進行すると食欲不振頭痛、肩こり、あごや目の痛み、心臓の痛みなど不調が多岐に渡ります。

お腹や心臓、頭の検査をしても異常は出てきません。
お腹のレントゲンやCT、MRIでは胃や腸に空気が溜まっていることが確認できます。

原因

ストレスによる噛みしめ、または習慣による噛みしめです。

上下の奥歯を噛みしめると、唾液が喉の奥に流れ落ちるので、唾液を飲む回数が増えます。
人は唾液を飲むときに空気も一緒に飲み込んでいますので、唾液を飲む回数が増えると必然的に空気を飲む量も増えてしまいます。

頭痛やあごの痛みなどは、噛みしめる筋肉が常に緊張状態になった場合に側頭筋が疲れた結果起こります。

また緊張状態が肩こりを引き起こし、肩の緊張から緊張型頭痛にもなります。

治療

心療内科や歯科で行われていますが、歯科では診療対象ではないこともあるので受診前に治療できるかどうか聞きましょう。

うつ病など心身症がベースにあればカウンセリングや薬物療法があります。

また噛みしめや唾液を飲み込む回数を減らすためにスプリントと呼ばれるマウスピースを装着し、意識的に上下の奥歯を離すようにして嚥下回数を減らす練習もあります。

空気嚥下症

かみしめ呑気症候群と同じように無意識に空気を飲み込んでしまいます。
腹部の膨満感や左上腹部痛、おなら、しゃっくりなどが出てきます。また動悸息切れ胸の痛みなどを起こすこともあります。

消化器官に異常がないかどうか調べ、他の原因が考えられないときにこの病態が考えられます。

原因

正確な原因ははっきりしていません。
食事で空気を一緒に取り込むことや、精神の不安定さなどが考えられています。

治療

早食いの人は意識してゆっくり食べるようにしたり、精神の不調を抱えている場合は心療内科を受診しましょう。

便秘

3日以上排便がない状態、便が固くなって排便が困難な場合、または毎日排便があっても便が残っている感じ(残便感)がある状態のことを便秘といいます。

また、正常範囲内の排便回数でも自分で便秘だと思い込む状態を主観的便秘といいます。

便秘になると腸内の細菌が増えガスがたまり、食欲不振などの症状があらわれます。

原因

さまざまな原因があります。

出産回数が多い女性や高齢者は腸の筋力や運動能力が低下している場合(弛緩性便秘)や、下剤の乱用や過敏性腸炎の影響などで腸の運動がひきつったようになる場合(痙攣性便秘)、排便の我慢や浣腸の乱用が原因で排便の反射が弱まっている場合(直腸性便秘)があります。

治療

便秘は朝食を食べたり、水分や食物繊維、発酵食品を摂取したり、定期的な運動をしたりして改善します。

ただ大腸の炎症やがん、手術後の腸管の癒着(腸がくっつくこと)などが原因となって便が腸を通過できない場合もあります。

さらに出血や嘔吐、腹痛、急な排便の停止を伴うときはすぐに病院を受診しましょう。

腸閉塞(イレウス)

腸の内容物がスムーズに進まないため、内容物や腸液、ガスが溜まってしまいます。

その結果腸が膨らんでしまうことから腹痛、吐き気、嘔吐といった症状が出ます。悪化すると炎症を起こして熱が出たり、腸が破裂したりする場合があります。

原因

腹部の手術による腸管の癒着や、大腸がんなどの腫瘍が腸を塞いでいることがあります。

またヘルニアがはまりこんだり、腸がねじれたりすると腸の血流がその部分に届かなくなり、結果として腸が壊死(組織の一部が死ぬこと)してしまうことも一因になります。

さらに腹部手術後に神経に異常が出てしまい腸の運動能力が麻痺して腸閉塞になる人もいます。

治療

腸管の腫瘍、繰り返し起こるねじれ、血流に障害があった場合は手術が必要になります。腸管の癒着にはチューブを入れて腸管を減圧して解消していきますが、場合によって手術もあり得ます。

手術にはお腹を大きく切り開く開腹手術と、小さな穴を開けて内視鏡で中を調べて器具を入れる腹腔鏡手術があります。

まとめ

まずはガスだまりの原因を取り除いて生活を見直しましょう。またガスの解消を手助けする薬を服用してみてもいいでしょう。
それでも改善がみられないときは病気を疑ってみてください。消化器内科や胃腸内科が基本です。

精神的な問題であれば心療内科も検討してみてください。