人間の体の中にはさまざまな臓器があります。その中には脾臓(ひぞう)という、肝臓や膵臓(すいぞう)など他の臓器と比べて聞き慣れない臓器があります。どのような働きをしているのでしょうか。今回は脾臓の役割や脾臓の病気などについて詳しく紹介していきます。
脾臓とは
脾臓は胃の奥に存在しており、身体の左側に位置しています。
通常は握りこぶし程度の大きさです。ただ他の病気の影響を受けた場合、脾臓が大きく腫れる(脾腫)ことがあります。脾腫は脾臓そのものの病気ではなく、その他の病気の影響によって起こります。
脾臓の役割
脾臓は主に以下の3つの役割をしています。
赤血球を壊す
古くなったり、傷ついたりした赤血球を壊して、鉄分とヘモグロビンに分ける働きをしています。
鉄分は骨髄へと送られ、新しい赤血球の成分として利用されます。不要になったヘモグロビンはビリルビンに変えて肝臓へ送り、老廃物として排泄されます。
抗体をつくる
脾臓には沢山のリンパ球があり、感染時に細菌やウイルスと戦う免疫の仕組みと関係しています。リンパ球は細菌やウイルスなど、身体に入ってきた敵から身を守るための抗体を作っています。
血液の貯蔵
脾臓は血小板などの血液成分を蓄える働きもあります。必要に応じて脾臓に溜めている血液を全身へと送ります。
脾臓がないとどうなる?
脾臓が人体から失われた場合、他の臓器が脾臓の働きをカバーします。命に別状はなく、生きることが可能です。
ただ脾臓は細菌やウイルスなどの感染源から身体を守ります。そのため脾臓がなくなれば感染症にかかりやすくなってしまいます。そのためワクチン接種をして感染予防に努めることが必要となります。
脾臓の病気ってあるの?

脾臓自体の病気には、脾臓の悪性腫瘍や血管腫、リンパ管腫などの腫瘍があります。悪性が疑われる場合は、脾臓を摘出することになります。
ただ脾臓の腫瘍がみられる頻度は少ないです。他の病気によって脾腫がみられ、脾臓を摘出する方が多くみられます。
脾腫とは
脾腫自体は病気ではありません。感染症やがん、血液疾患など幅広い病気によって起こる病態です。
脾腫の症状
症状が出ない場合が多いですが、左上腹部や背中に腫れや痛みを覚えることもあります。脾臓が腫れて胃が押されると、食欲不振や満腹感といった症状が現れます。
また脾臓自体の血液が不足して脾臓の一部が壊死を起こすと、左肩の痛みがみられることもあります。
脾腫になると脾臓の働きが過剰になり、血液が沢山脾臓に溜め込まれてより脾臓が大きくなります。脾臓が大きくなると血液を溜め込む働きがさらに加速していってしまいます。
やがて正常な赤血球まで破壊して、極度の貧血を起こすことがあります。また白血球が不足して感染のリスクが高くなったり、血小板が不足して出血傾向がみられたりする場合があります。
脾臓自体が血液不足に陥ると、脾臓が損傷して出血や壊死を起こすこともあります。
脾腫を起こす原因
脾腫は様々な病気によって起こります。一部を紹介します。
- 肝炎、伝染性単核球症、マラリア、結核などの感染症
- 遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症などの貧血
- 白血病、骨髄線維症、真性赤血球増加症、血液のリンパ腫などの血液疾患
- ゴーシェ病、ニーマンピック病、ウォルマン病など、糖脂質やコレステロールなどの物質が蓄積する疾患
- 門脈圧亢進症
- 肝硬変
- アミロイドーシス(異常なタンパク質が蓄積して、臓器の機能不全を起こす疾患)
- サルコイドーシス(全身の臓器にさまざまな症状が起こる原因不明の疾患)
- 全身性エリテマトーデス
脾腫の治療
脾腫がみられた場合、脾臓が腫れる原因となる病気が起こっている可能性があります。そのため原因となる病気を見つけ、その疾患の治療を行います。
次のような症状がみられた場合は、脾臓の摘出手術や放射線療法で脾臓を小さくすることが検討されます。
- 脾腫によって極度の貧血がみられたとき
- 白血球が少なくなって感染症のリスクが高くなるとき
- 血小板が少なくなって出血しやすくなっていたとき
- 脾腫によって他の臓器が圧迫されて痛みが強いとき
- 脾臓が損傷して出血や壊死がみられているとき
まとめ
脾臓はなくても命に関わらない臓器です。ただ免疫の働きに関与している臓器であるため、なくなることで感染のリスクは高くなります。以前は脾臓が事故などで損傷を受けた場合は摘出していた場合でも、役割を重視して輸血や手術で修復できる場合は温存することもあります。
また脾臓が腫れて大きくなる状態は、他の病気によって起こることが多いです。目立たない臓器ですが気にかけてみるといいかもしれません。