みなさんは急性腎障害という言葉を聞いたことがありますか。急性腎障害とは、あるひとつの病気をさす言葉ではなく、様々な原因によって起こる急性の腎機能低下をまとめて表したものです。場合によっては死に繋がることもある重篤な状態として知られています。あまり馴染みがない病気かと思いますが、詳しくみていきましょう。

目次

急性腎障害とは

急性腎障害とは、様々な原因によって数時間から数日という短い期間の間に急激に腎臓の機能が低下してしまうことを指します。以前は急性腎不全と呼ばれていましたが、近年定義がより明確化されたことに伴い、急性腎障害と呼ばれることが多くなりました。

腎臓の機能が失われると、尿によって老廃物を排泄できなくなり、加えて体内の水分量や塩分量の調節なども行えなくなってしまうため、様々な症状が現れることになります。

代表的な症状としては、

などがあります。しかし、人によっては初期症状を認めないこともあり、漠然とした体調不良で受診した結果、急性腎障害と判明する場合もあります。

症状が進むと高カリウム血症体液の貯留が深刻化し、心不全肺水腫(肺に水が溜まってしまう)などによって死亡する恐れもある重篤な病気です。

検査の方法

上記のような症状が現れた場合は病院を受診することが勧められます。病院を受診すると、腎機能の検査としてまず血液検査尿検査が行われます。血液検査では血清尿素窒素(BUN)や血清クレアチニン(Cr)という腎臓機能の程度を示す指標を計測するのに加え、血清カリウム(K)という様々な役割をし、普段は腎臓から排泄されることによって濃度を維持している電解質の量に異常がないかも調べます。尿検査では、尿量尿蛋白尿潜血など腎臓の異常を示す所見があるかどうかを調べます。

急性腎障害の原因

急性腎障害の原因となる病気には様々な種類が存在しますが、大まかには3種類に分類することができます。分類によって治療法も異なります。

腎前性

血液の循環が悪くなることで腎臓に流れ込む血液量が低下し、腎臓で血液をろ過する機能が低下する腎障害のことを指します。

腎臓で血液をろ過するためには、フィルターの役割をする糸球体という部分に一定以上の血液が流れ込まなければなりません。流れ込む血液量がそれを下回ってしまうと、老廃物を十分にろ過できなくなってしまうのです。

原因となる疾患

敗血症(血液に菌が入り込んでしまう)、出血脱水心不全、心筋梗塞動脈硬化ネフローゼ症候群などが挙げられます。

腎性

腎臓そのものが病気によって傷害され、機能が低下する腎障害のことを指します。

腎臓自体が傷ついたり、病気に侵されてしまったりすると、尿をろ過する部分などが壊れ、機能を失ってしまうため、尿が作れなくなってしまいます。

原因となる疾患

腎臓での血流障害が起こる腎梗塞腎動脈血栓のほか、急性糸球体腎炎全身性エリテマトーデスによるループス腎炎急性間質性腎炎、薬剤や横紋筋融解症による急性尿細管壊死などがあります。

腎後性

尿の流れる経路が病気によって障害を受け、尿が排出できないために腎機能も低下してしまう腎障害のことを指します。

尿自体は問題なく作ることができるのですが、腎臓から膀胱へと尿を運ぶ尿管という管や、膀胱から尿を外に出す尿道という管が塞がったり、狭まったりしてしまうと、腎臓に圧力がかかって尿を作ることができなくなってしまうのです。

原因となる疾患

腫瘍結石による尿管閉塞前立腺肥大症が原因疾患となります。

急性腎障害の治療

腎臓

先程も述べた通り、急性腎障害の治療法も3つの分類によって大まかに分けることが出来ます。

補液・輸血

腎前性では、全身の血液が減ってしまっているため、それを補うために輔液輸血を行います。そうすることによって腎臓に流れ込む血液の量が元に戻り、腎機能も回復させることが出来ます。

原因疾患の治療

主に原因となっている疾患の治療を行い、水・電解質の補正や栄養管理を並行して行います。腎性の場合は腎臓自体が傷ついていることが原因なので、その原因の治療を優先し、同時に異常が出ている体液への補正も行っていくことが目的となります。

尿路閉塞の原因・尿路の圧力の除去

腎後性では、塞がってしまった尿の通り道を開くことで尿がきちんと排泄されるようにし、腎が正常に尿を産生できるように治療を行います。

症状が重い場合では血液透析などの血液浄化療法(排泄できずに溜まってしまった老廃物を血液から取り除く治療)を行うことになります。

急性腎障害の予後

急性腎障害は、適切な治療を行わなければ心不全や肺水腫を引き起こしてしまうため、命に関わる重い病気です。治療が遅れてしまった場合は腎機能が完全に回復せず、慢性腎不全に移行し、腎移植や人工透析が必要となる可能性もあります。

そのため、迅速な診断と治療が非常に大切となりますが、治療がうまくいった場合でも正常な状態に戻るには数週間から数カ月の時間がかかります。また、退院後も減塩などの食事療法の継続が必要となります。

まとめ

急性腎障害は、様々な原因によって腎機能が急激に低下してしまう病気のことで、命にかかわることもあるため、迅速な治療が必要です。しっかりと医師の診断を受けるようにしましょう。