背中や胸が痛い、そんな症状はもしかしたら大動脈解離かもしれません。
大動脈解離は突然起こり、命にも関わることもある重要な病気です。
今回は、大動脈解離の原因やメカニズムについて詳しく解説していきます。
大動脈解離ってどんな病気?
大動脈とは、心臓から全身に血液を送り出す、体の中で一番太い動脈です。
心臓から拍出された血液は、大動脈を通り、いろいろな臓器に巡っています。
大動脈解離は、大動脈に亀裂が生じ、そこから血液が入りこんで血管内部を2層に引き裂く病気です。
血管が解離すると偽腔(ぎくう)という血路ができ、ここに血液がたまって瘤(りゅう、こぶ)になると解離性大動脈瘤とも呼ばれます。
大動脈の中でも、心臓に近い部分を上行大動脈(じょうこうだいどうみゃく:上の図の大動脈からでている3本の血管の手前の部分)といい、その上行大動脈に解離が及んでいるかそうでないかでタイプが分類されます(スタンフォード分類といいます)。
上行大動脈に解離が及んでいるものがスタンフォードA型、上行大動脈に解離が及んでいないものがスタンフォードB型です。
これにより、重症度や治療方針も変わってきます。
特にスタンフォードA型の場合は血管の破裂や重大な合併症を伴うことも多く、死に至る危険性が高いので、早急な治療や手術が必要とされます。
大動脈解離の原因とは?
大動脈解離には、血管の脆さに加えて、高い血圧がかかることが大きく影響しているとされています。
また、高血圧やマルファン症候群といった基礎的疾患が原因となることもあります。
高血圧
血圧が上がると血管に圧力がかかるため、動脈壁に傷がつきます。
その修復を繰り返しているうちに血管自体が脆くなり、解離が生じる可能性も高くなります。
マルファン症候群
遺伝性の難病です。必ずとはいえませんが、背が高い、手足の指が細く長い、背骨の弯曲、視力の弱さなどの身体的特徴があります。
マルファン症候群では細胞と細胞をつなぐ結合組織が弱くなるため、大動脈解離が起こりやすいとされています。
大動脈解離の症状とは?
解離自体による症状
大動脈が解離すると、突然、胸や背中に激しい痛みが生じます。
痛みが最も激しくなるのは発症した時ですが、解離が腹部の大動脈まで及んだ場合は徐々に痛みが身体の下の方に移動していくため、腹痛や腰痛も生じます。
裂けるような痛みが、首から足まで痛みが広がります。
稀ではありますが、胸や背中の痛みが起こらないケースもあるので注意が必要です。
合併症による症状
偽腔が生じることによってみられる症状があります。
偽腔のできる部位によって様々な症状がみられますが、めまいや頭痛、血圧の左右差、胸痛、腹痛、狭心症、胃潰瘍などが発生します。
さらに、破裂によって出血性ショックや心タンポナーデ(心膜腔内出血:心膜腔を満たしている潤滑油(心嚢液)が急速または大量に増加して心臓を抑えこみ、心臓が十分に拡張できなくなっている状態)を起こします。
解離が大動脈弁に達すると、大動脈閉鎖不全症(AR)から心不全、肺うっ血を生じ、呼吸困難や血痰が生じる場合もあります。
大動脈からは、いろいろな臓器に血管が分岐しています。
根元である大動脈が解離することで血流障害を生じ、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全などさまざまな合併症を引き起こします。
また、解離によって大動脈の壁が破裂した場合や心臓のほうまで血管が裂けてしまう場合などは循環を保てず、血圧が一気に低下し、生命の危険に及びます。
まとめ
大動脈解離は、発症するととても怖い病気です。スタンフォードA型、B型どちらのタイプの大動脈解離でも、大体の人はもともと血圧が高いということがリスクを高める要因として考えられます。