胸に痛みがあると、まず心臓の病気かなと考える方が多いかと思います。
それでは、胸の痛みに加えて発熱がある場合はどうでしょうか。
心臓や肺に加えて、実は胆嚢や膵臓などの消化器が原因になっていることもあるのです。
今回は胸痛の原因を区別するときのポイントと胸痛と発熱が起こる原因について詳しくご紹介していきます。
胸痛はなぜ起こる?
胸痛が起こる病気には、心臓や血管、肺、胸膜、骨、神経、筋肉、消化器など非常に様々な可能性が考えられます。
これらを区別するためには、胸の中でもどの辺りが痛むのか、どのようなときに痛むのか、他にはどのような症状があるかということが重要なポイントになります。
また、胸痛に加えて発熱がみられる場合、細菌やウイルスへの感染によってこれらの部位または全身に炎症が起こっていると考えられます。
発熱と胸痛が起こる病気
発熱に合わせて胸が痛くなる原因として、以下のような病気が考えられます。
心筋炎
心臓の筋肉(心筋)に炎症が起こったもので、原因は風邪や胃腸炎を引き起こすウイルスと同じものです。
風邪や胃腸炎を患った3~5日後、突然胸痛や心不全が現れます。健康な人にでも突然起こりうる病気です。
症状は喉の痛み、咳、発熱などの風邪様の症状から始まり、やがて胃の不快感、腹痛、下痢、倦怠感、発熱など多彩な症状が加わります。
心筋は全身に血液を送り出すポンプの役割をしていますが、炎症によってこの働きが悪くなることで、不整脈や心不全に陥ると、失神やショック(急激な血圧低下による意識障害)、呼吸困難を招き、命に関わることも少なくありません。
上に挙げたような、風邪の症状が重症化するようなパターンだけでなく、症状や発症の仕方が多種多様で診断の難しい病気でもあります。
心筋炎について詳しくは「子供に多い心筋炎…予防はできる?対処法は?」をご覧ください。
胸膜炎
胸膜とは肺を覆っている2枚の膜で、細菌感染やがん、膠原病などをきっかけにしてこの胸膜に炎症が起きたものを胸膜炎といいます。
2枚の胸膜のうち外側にある壁側胸膜には痛覚が存在するため、症状として胸痛が現れます。
胸膜は呼吸、特に呼気時に引き伸ばされるため、深く息を吸うと痛みが悪化するという特徴があります。
また2枚の胸膜の間には胸水という水分が僅かに存在していますが、炎症が起こるとこの水分量が増加するため、胸水によって肺が圧迫されることで呼吸困難が生じます。
胸膜炎について詳しくは「胸膜炎ってどんな病気?胸に水が溜るってどういうこと?」をご覧ください。
気管支炎
風邪の炎症が気道を通って気管支まで広がったもので、頻度の高い病気です。
主な症状は発熱と咳、痰ですが、その他、胸痛や食欲不振、倦怠感などの症状を伴うこともあります。
比較的治癒しやすい病気ですが、炎症が続く場合には肺炎にまで進展することもあります。
気管支炎について詳しくは「しつこい咳、風邪じゃなくて気管支炎かも。症状と原因を徹底解説」をご覧ください。
肺炎

肺炎は死亡原因の3位という恐ろしい病気です(日本呼吸器学会より)が、風邪をこじらせた程度でも起こりうるありふれた病気でもあります。
主な原因は肺炎球菌やインフルエンザ菌などの感染で、これらの細菌による肺炎を細菌性肺炎と呼びます。
症状は咳、膿の混じった痰、胸痛、呼吸困難などの呼吸器症状に加え、高熱や倦怠感などの全身症状も加わります。
これに対し、マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジアなどによる肺炎を非定型肺炎と呼びます。
マイコプラズマでは子供に多く痰や高熱が出ないかわりに頑固な咳が続く、レジオネラでは高齢者に多く筋肉痛や意識障害などの全身症状が現れやすいなど、同じ肺炎でも症状の特徴がやや異なります。
肺炎について詳しくは「肺炎ってどんな病気?症状8つと原因を解説」をご覧ください。
肺がん
肺がんは年間8万人に発症し、7万人が死亡するといわれている死亡率の非常に高いがんです(日本呼吸器学会より)。原因の70%は喫煙ですが、環境や食生活なども発症のリスクになります。
症状は肺がんの種類や位置、進行度によって異なり、咳や痰(血痰)、発熱、胸痛、背部痛、呼吸困難、声のかすれ、倦怠感、体重減少など様々です。
特に血痰が出た場合には、呼吸器内科への受診をおすすめします。
肺がんについて詳しくは「止まらない咳…もしかして病気? 肺がんの初期症状と検査方法」をご覧ください。
結核
結核菌による感染症で、かつては国民病ともいわれていました。
現在では感染者は激減していますが、近年また患者数の報告が増えています。免疫力の低下した高齢者に多くみられます。
主な症状は2週間以上続く咳、発熱で、この他にも血痰、胸痛、倦怠感や体重減少、寝汗などの症状があります。
結核菌は肺以外にもリンパ節や腸、骨などに感染することもあり、リンパ節の腫れ、腹痛や下痢、胸痛や腰痛などがみられることもあります。
結核について詳しくは「長引く「咳」は結核が原因!? 感染の連鎖を断ち切るには」をご覧ください。
このほか、胆石や膵炎といった病気が原因となることもあります。
まとめ
肺の病気では症状が似ているため、風邪がなかなか治らないと思っていたら意外な病気が隠れていたというケースも珍しくありません。
また、高齢者などの免疫力が低い方だけでなく、健康な人でも風邪をこじらせれば肺炎や心筋炎などを発症する可能性も十分あります。
胸の痛みは、全身に血液や酸素を送っている心臓や肺の病気のサインとなっていることもあり、異常を感じたら早めに内科を受診するとよいでしょう。