血栓症とは、血管内にできた血液の塊(血栓)によって血流が阻害されることによって起こる病気です。

血栓症には、主に下肢にできる静脈血栓による肺塞栓や、動脈血栓による心筋梗塞脳梗塞などの命に関わる病気もあり、身体を動かす機会が減り、急激な冷えや気温の変化による血流の変化や血管の収縮が起こりやすい冬場には特に注意が必要です。

このような血栓症を予防する方法とはどのようなものでしょうか?血栓症の予防について詳しく解説します。

目次

血栓ができる原因

血栓は ①血流障害  ②血管内皮の損傷  ③血液凝固能の亢進 を原因として起こります。

①血流障害は動脈硬化糖尿病心臓病などの病気が原因となって起こるもののほか、姿勢冷えストレス喫煙などの生活習慣の影響も受けています。

また、②血管内皮の損傷動脈硬化糖尿病喫煙などによって、血管が傷つきやすい状態にあることが原因となります。

さらに③血液凝固能の亢進は、いわゆるドロドロ血といわれるもので、先天的な要因のほか、高脂血症経口避妊薬の服用によって起こる場合があります。

血栓症の原因や起こりうる病気について詳しくは、記事「冬場は特に要注意!血栓症とはどんなもの?」をご参照ください。

このように血栓ができる原因は多岐にわたりますが、生活習慣を見直すことで改善できるものも多くあります。

血栓を予防する生活習慣とは

1.動脈硬化を予防する

血栓を作らないために気を付けることの多くは、動脈硬化やその原因となる肥満糖尿病高血圧の予防につながります。

①肥満を予防、是正する

太っている人

肥満は動脈硬化や糖尿病の原因となり、血栓を作る大きな危険因子となります。

適正体重(=身長(m)×身長(m)×22を目安に体重をコントロールしましょう。

食事療法のほか、筋肉の維持や血行の促進と言った血栓予防の効果もあるウォーキングなどの運動も取り入れましょう。

②糖尿病を予防する

糖尿病は自覚症状のないままに動脈硬化を進行させる病気です。

糖尿病の発症には肥満や過食、運動不足などの生活習慣のほか、両親や兄弟が糖尿病という遺伝体質も関与しています。

これらのリスクを自己チェックし、健診などの機会に血糖値に注意しておきましょう。

③高脂血症を予防する

高脂血症は血液を固まりやすくするといわれ、いわゆるドロドロ血の原因となります。

高脂血症遺伝や体質、肥満や過食によって起こりますが、太っていないのにコレステロール値が高い人もいます。家族性高コレステロール血症という遺伝性疾患のほか、コレステロールの多い食品を好む場合や、「隠れ肥満」と言われる内臓脂肪型肥満の場合には体重に関係なく高脂血症となります。

高脂血症の予防には、食事により動物性脂肪やコレステロールの多い食品(魚卵類、内臓類)の摂取を控え、食物繊維やイソフラボン、オレイン酸やDHA/EPAを多く含む、コレステロールを下げる食品の摂取を心掛けましょう。

④高血圧を予防する

高血圧は動脈硬化を進行させる原因となるほか、既に動脈硬化を起こしているサインでもあります。頭が痛い、重い、めまいがするといった自覚症状がない場合も多く、測定の度に血圧の値の変化が大きい場合などは、高血圧かどうか判断がつかないこともあります。特に肥満や糖尿病、高脂血症など、動脈硬化のリスクがある場合は、定期的に血圧を測定し注意しておきましょう。

高血圧の予防には、減塩を基本とした食事療法のほか、適度な運動や禁煙、規則正しい生活を送るといった自律神経のバランスをとることも大切です。

2.全身運動とストレッチ、マッサージを行う

血栓の予防には、動脈硬化を予防にも効果のある全身運動と、血栓のできやすい下肢を中心としたストレッチマッサージが効果的です。

ウォーキングなどの全身運動は血流を促進し、筋力の低下を防ぐ効果があります。

また、特に静脈血栓のできやすいふくらはぎは、その筋肉が充分に収縮することで静脈還流が促進されます。

*静脈還流とは?

立位や座位などの姿勢では下肢は心臓よりも低い位置にあるため、心臓に静脈血を送るためにはふくらはぎの筋肉が充分に収縮し、ポンプの働きをする必要があります。この静脈の働きを静脈還流といいます。

立ちっぱなしや座りっぱなしは、静脈還流が低下し血栓を作りやすい状態となっています。

立位の場合は、その場での足踏みや、つま先立ち運動を数回行うだけでも効果があります。座位の場合も、足首や膝関節をできるだけ動かすようにしましょう。

また、入浴時に足先からふくらはぎ、太ももに向かってマッサージを行うことや、家庭用のマッサージ器具の使用も血栓予防に役立ちます。

3.禁煙

タバコは血流を低下させ、さらに血管の炎症を起こすため血栓を作る大きなリスクとなります。

特に肺塞栓を起こした場合は、もともとも肺の状態の良し悪しがその予後にも大きく影響します。

健康のために禁煙を心掛けましょう。

4.身体を冷やさない

温かい飲み物

冬場に血栓症が増える原因として、急激な冷えや気温の変化による血流の低下や血管の収縮が考えられます。夏場であっても薄着やエアコンによる冷えは血栓を作る原因となります。

気温や室温のほかにも、冷たいものを好んで飲んだり、シャワーのみで済ませたりする生活習慣は、身体の冷えを引き起こします。

こうした生活習慣を見直し、身体の内外から冷えを予防しましょう。

5.脱水を防ぐ

脱水状態では、血液の濃度が高くなるため血流が悪くなります。そのため、こまめな水分補給を行ってください。ただし、アルコールには利尿作用があるため、お酒を飲むのは逆効果であることを覚えておきましょう。

6.妊娠や女性ホルモンの変化にも注意

妊娠中や産褥期は血液凝固能を亢進させ、血栓を作りやすくなっています。

大きくなった下腹部による血管の圧迫や、出産による血管内皮の損傷など、妊娠出産は血栓を作るリスクが非常に高い状態となっています。

血栓症の予防として、長時間の同一体位(立位、座位)を避け、マッサージや保温により血流を促進しましょう。

また、女性ホルモンの影響により下腹部の張りやむくみなどの月経前症候群(PMSの症状が起こり、身体の血流にも変化が現れます。特に冷えには注意しておきましょう。

経口避妊薬(ピル)の服用は、その副作用として血栓を作りやすいとされています。ふくらはぎのむくみ手足の痺れなどの症状がある場合は、すぐに医師に相談しましょう。

さらに更年期には女性ホルモン(エストロゲン)の働きが弱くなることによって、コレステロールが上昇しやすく、動脈硬化の進行やそれによって血栓ができやすい状態となります。

女性特有の体調の変化に注意し、生活習慣を整え血栓を予防するようにしましょう。

まとめ

血栓の予防には動脈硬化の予防が基本となります。食事や運動、またそれによる適正体重の維持など、長期にわたって生活を変えていくことも必要です。

さらに下肢の静脈血栓を予防するためのストレッチやマッサージなども生活に取り入れ、血栓を予防していきましょう。