発熱があるだけでなく頭痛もある場合、原因としてはどのような病気が考えられるでしょうか。発熱は主に感染症によってみられるものですが、頭痛は脳や神経の障害を反映していることもあり、発熱と頭痛が同時にあるような場合は重篤な病気のサインになっているかもしれません。今回は発熱と頭痛の仕組みと考えられる主な病気について、具体的な症状と併せて紹介していきます。
発熱の仕組み
発熱は細菌やウイルスなどの感染症から身体を守る仕組みです。細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、白血球などの免疫細胞が敵を認識して攻撃し、身体の中で炎症が起こります。体温は脳にある視床下部によって調整されていますが、免疫細胞は平熱よりも高い温度の方が働きやすいため、視床下部からは体温を上げるように命令が送られます。
このため、感染症や自己免疫疾患(自分自身の細胞を敵とみなして攻撃してしまう免疫系の病気)では発熱しますが、これに加えて脳が障害された場合にも発熱がみられることがあります。体温を調整している視床下部が損傷を受けると、高熱が続く状態になります。
頭痛の仕組み
頭痛といっても、脳そのものや頭蓋骨自体は痛みを感じません。一方、脳に分布している血管や骨を覆っている骨膜という膜には痛覚が存在します。したがって、頭痛は頭に走っている血管が引き伸ばされたり、圧迫されたり、炎症が起こったような場合に生じます。頭の中でも、前の方が刺激されると前頭部や眼周辺が痛み、後ろの方が刺激されると後頭部や耳周辺に痛みが現れます。また、原因に関わらず、高熱が出た場合には一般的に頭痛を伴うことが知られています。
発熱した時に頭痛がみられる病気

副鼻腔炎
副鼻腔とは、頬、目、額の骨にある空洞で、それぞれ鼻腔と繋がっています。風邪などで鼻の粘膜に炎症が起こると、副鼻腔まで広がってしまうことがあります。症状としては、頭痛や発熱に加え、鼻詰まり、ねばねばした黄色い鼻水、においが分からないなどがあります。鼻は耳や喉とも繋がりがあるため、中耳炎や咳などを起こすこともあります。頬や額を叩いたり、前かがみになったりすると痛みが悪化することが特徴です。
インフルエンザ
たいてい12月から3月にかけて流行し、咳や鼻水、喉の痛みなどの風邪症状に加え、38度以上の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などを伴います。感染した人の咳やくしゃみによって空気中に散らばったウイルスを吸入することで感染し、1~3日の潜伏期間を経て発症します。通常1週間程度で軽快しますが、肺炎や脳症などを合併することもあります。
急性扁桃炎
細菌やウイルスの感染によって生じる扁桃の炎症です。扁桃とは免疫を担っているリンパ組織であり、喉の奥にある扁桃に炎症が起こることで発熱や頭痛に加え、喉の痛み、耳の痛み、首のリンパ節の腫れ、倦怠感、口臭などがみられます。特に喉の痛みが強く、唾液すら飲み込めないことも珍しくありません。特にA群β溶血性レンサ球菌の感染では、発疹や腎炎などを合併することがあります。
髄膜炎
髄膜とは、脳と脊髄を覆っている膜で、ここに感染症が起こると発熱、頭痛、項部硬直の3徴が現れます。項部硬直とはうなじが硬くなっている状態で、患者さんは顎を胸につけることができません。ウイルスが原因の場合、比較的軽症のまま治癒しますが、細菌が原因の場合は重症化しやすく、吐き気や嘔吐、麻痺、意識障害などを伴うこともあります。
脳炎
主な原因はウイルス感染で、ウイルスが脳に直接感染する他、過去に感染して身体の中に潜伏していたウイルスが脳で活性化したり、免疫の過剰な反応によって脳を攻撃してしまうこともあります。脳炎の症状は発熱や頭痛、人格の変化、けいれん、麻痺、眠気などがありますが、これらの症状に先行して吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状や咳、喉の痛み、鼻水などの風邪のような症状が起こることがあります。
このほか、くも膜下出血や脳内出血でも頭痛とともに発熱を伴う場合もありますが、その場合は症状がかなり重たくなっています。どちらかの病気だと感じたら発熱する前に病院へ行きましょう。
まとめ
インフルエンザのように鼻や喉の感染症によって発熱と頭痛がみられることもありますが、脳や神経に炎症が及ぶことでも同じような症状が現れることがあります。脳に障害が起きている場合、嘔吐することが多く、鑑別のポイントとして注意が必要です。普段の頭痛とは何か違うと感じたら、すぐに脳神経内科または脳神経外科に受診するようにしてください。手足が思うように動かない、何か変なことを言っているなどの症状も非常に重要なキーワードです。