普段から医療機関や介護施設のサービスを利用している高齢者の方も多いでしょう。しかし多くの人がいる所では、感染症がうつりやすくなっています。
また、高齢者の方で既に何かしらの持病を抱えていれば、感染症をきっかけに病状が悪化するかもしれません。
今回は、高齢者の方が注意したい感染症について紹介します。
高齢者が感染症に注意したい理由は?
高齢者の方は、動脈硬化を原因とする病気や糖尿病、ときにはがんといった基礎疾患を持っている恐れがあります。体が弱っており、通常よりも感染症にかかりやすい状態です。
年齢を重ねていくと、身体機能が低下していきます(程度には個人差があります)。それに伴い、抵抗力が落ちてしまうため感染症にもかかりやすくなっているのです。
感染した後も、回復に時間がかかるだけでなく、いつの間にか病気が進行して重症化してしまっているなんてことも少なくありません。
とくに、医療機関や介護施設では食事やリハビリ、レクリエーション、排泄など、様々な場面で菌やウイルスをうつされる可能性があります。
それぞれの病院や施設で集団感染対策はされていると思いますが、高齢者の方自身も、感染症にかかるリスクを認識しなければなりません。
注意したい感染症は?

インフルエンザ
毎年、冬にかけて猛威をふるいます。突然発症して全身に症状が現れるのが特徴です。
具体的な症状としては高熱、鼻水や咳、くしゃみ、喉の痛み、だるさや筋肉・関節の痛みといったものがあります。
健康的な成人と比べると、高齢者の方は気管支炎や肺炎などを併発しやすいです。
重症化すると心不全を起こすこともあります。
インフルエンザは予防接種が行われますが、受けたからといって絶対に感染しないわけではないので油断は禁物です。
ノロウイルス
ノロウイルスに汚染された二枚貝などを十分に加熱しないで摂取すると、体内でノロウイルスが増殖して下痢や嘔吐などの症状を引き起こします。そのほか腹痛や発熱もみられます。
ノロウイルスは非常に強い感染力を持っています。少量のウイルスでも集団感染に発展してしまうことがあるくらいです。
特に高齢者施設などでは、自分で上手く排泄ができなかったり、手洗いが不十分であったりすると、感染が広がる原因となります。
もし、感染してしまった場合には、下痢や嘔吐による脱水症状や、吐いたものを喉に詰まらせる窒息に注意しましょう。
結核
結核は結核菌による感染症です。大半は感染しても発症しませんが、免疫力が低下している高齢者は発症しやすい傾向にあります。
また高齢者の場合、結核において特徴的な咳や痰が出ない場合があります。
他の症状としては発熱や寝汗、倦怠感、体重減少といったものがあるので、注意して見るようにしましょう。
結核は集団感染のリスクも高い病気です。
病院や介護施設関連も結核の集団感染のうち25%の発生源となっています(結核予防会結核研究所より)。
感染源となりやすい場所に、感染しやすい高齢者がいるという状況を理解して、きちんと対策をとるようにしましょう。
疥癬(かいせん)
ダニの一種「ヒセンダニ」が皮膚に寄生し、発症する皮膚病です。
患者さんと皮膚が直接接触したり、衣類や寝具などを介したりして感染します。
疥癬の症状としては手や腕に掘ったような跡に見える疥癬トンネル、丘疹(きゅうしん:赤く盛り上がったブツブツ)、かゆみといったものがあります。丘疹は全身にみられるのが特徴です。
高齢者では夜中や体が温まった時に痒みが強くなり、眠れないほど辛くなる場合があります。
しかし、患部をかきむしってしまうと、皮膚が粉を吹いたような状態になります。こうして皮(痴皮)が至る所に落ち、そこから集団感染を招いてしまうのです。
抵抗力が低下している場合はアレルギー反応を起こさず、かゆみを感じないこともあるので注意するようにしましょう。
その他
このほかB型肝炎やC型肝炎、HIV、梅毒なども考えられます。
また、腸や歯などにいる常在菌をきっかけに肺炎や敗血症を引き起こすこともあります。
まとめ
高齢者は、成人と比べると感染症にかかるリスクが高くなります。特徴的な症状が現れず、感染になかなか気付かないことも多いです。
普段から手洗いやマスクを着用する習慣をつけ、少しでも感染のリスクを下げましょう。
また、食生活や生活のリズムを整え、健康的な体づくりを心掛けることも大切です。